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オフィスがハブ化し、分散する中での「働く場所」の必要性【The Place “Work Design Innovation” vol.1/3】

2021年2月4日(木)、ヴィスが運営する新しいオフィスビル「The Place」にて「はたらく場所の必要性とこれからのオフィスのあり方」というテーマでカンファレンスを行いました。その内容を3部に分けてご紹介します。

vol.1:オフィスがハブ化し、分散する中での「働く場所」の必要性
vol.2:イノベーションが生まれコミュニケーションが活性化するオフィス作り
vol.3:「The Place」で実践する、快適で居心地良く働けるオフィス

登壇者

ゲストパネラー
東京造形大学 造形学部 デザイン学科 室内建築専攻領域教授
日本オフィス学会 副会長 日本建築学会ワークプレイス小委員会 主査
地主広明先生
※オンラインでのご参加


パネラー
株式会社ヴィス クリエイティブ事業本部 常務取締役 大滝仁実


ナビゲーター
株式会社ヴィス デザイナーズオフィス事業本部 常務取締役 金谷智浩

パネラー及びナビゲーターの自己紹介

地主先生:
1981年大学卒業後、オフィス家具メーカーに就職。オフィス環境事業本部のチーフデザイナー、オフィス環境研究所の所長を経て、現在、東京造形大学にてデザインを教えています。

主にオフィスのデザインの歴史、19世紀から現代までのオフィスを俯瞰して、改めて未来のオフィスを考えてみよう、という研究を行っています。

最近の話題としてはやはりABWでしょうか。全世界的にキーワードとして登場していますが、国ごとに概念が違う、あるいは定義が違う、ということが問題としてあります。現在、ヨーロッパのISO(国際標準化機構)を中心に、(私も日本の委員の1人なので)国ごとに違うものを全世界的にまとめていこう、といった動きもあります。


大滝:
ヴィスでクリエイティブ事業本部の責任者をしております。地主先生には2か月に1回ヴィスにお越しいただき、オフィスについての講義を行っていただいています。ワークプレイス小委員会でもご一緒させていただいたりと、色々な場所でお世話になっています。

先生のお話されたようにABWがフューチャーされていますが、以前からそういう形で働き方の環境ということを考えながら仕事を行ってきました。本日は、地主先生からは論理的なご意見をいただき、私の方からは普段行っている現場の意見をお伝えしながら進められたら良いなと考えています。


金谷:
ヴィスでデザイナーズオフィス事業本部の責任者をしており、広報活動、マーケティング活動も含めマルチに業務を行っています。ヴィスが初めてオフィスのデザインをし、デザイナーズオフィス事業を開始した頃からヴィスに参画しています。17年にわたってヴィスのPM(プロジェクトマネージャー)としてデザイナーズオフィスを広げてきました。

最近のトピックスとして、コロナ禍において先行きが不透明な時代だからこそ、「選択できる」という考え方を念頭に仕事を進めています。「選択できる」ことの回答はまだ模索している最中ではありますが、様々な選択肢の中から選んで、チャレンジして、それに対してPDCAを回して改革していく、ということを行っています。

具体的には、企業のオフィスデザインを進める際、トップインタビューや社内サーベイ(アンケート)に特に注力しています。もちろんこれまでも行ってきましたが、チャレンジを成功させるための合意形成としても重要視しており、様々な事例を増やしていきたいという考えを持っています。

コロナ禍における働き方は「オルタナティブ・オフィシング」を実現しつつある

それでは、本題に入ります。「働く場所の必要性と、これからのオフィスのあり方」というテーマで、話を進めます。

視聴者の皆さまにとって関心が強いテーマとして、「アフターコロナの働き方」「オフィスのあり方がどうなるか」が挙げられると思います。そのあたり、地主先生のお考えをお聞かせください。


地主先生:
難しい質問ですが、結局は、「働く場所の必要性が現在どうなっているのか」だと思います。究極の仮説はオフィス不要論です。

いくらテクノロジーが向上しようが、人間の身体が残る以上、身体と最も関わる場所は当然残る。そうすると「残され方、残り方をどう構築していくのか」が最大の問題となります。

先ほど、現在はABWという考え方が世界中に流布しているという話をしましたが、これはもともと、1990年代のアメリカの「オルタナティブ・オフィシング」が始まりと考えられます。もちろん、他にも色々な仮説は立てられますが、おそらくこれが直接的な考え方だと思います。

当時、アメリカのサンフランシスコ大震災で、都市部のほとんどのビルが崩壊してしまった。その時に一極集中のハコ型ビルはもはや必要ないのではないか。あるいは、リスク回避のためにも分散すべきだ、という議論がありました。

ところが、当時は物流の変遷で西海岸の湾岸倉庫が空いてしまったため、湾岸倉庫を競ってオフィス化していく形になってしまった。そもそもは「分散化する」「場所選択」が「オルタナティブ・オフィシング」の考え方なのに、結局は湾岸倉庫をオフィシングするということに代わって、それが「オルタナティブ・オフィシング」と思われるようになってしまいました。

それが日本に入ってきて、日本でもそれを模倣して、多くの湾岸倉庫をオフィス化した事例が出てきたのですが、そもそもは働き方の分散、働く場所の分散、という概念です。その中でいかに分散化していくか、すなわち、都市、あるいは郊外、もしくは家の中、様々なところで、場所選択していくのが本来の「オルタナティブ・オフィシング」です。

そう考えると、現在のコロナ禍における動き方は、本来の「オルタナティブ・オフィシング」を、ようやく実現しつつあるというように思います。

その中で、どのように身体が関わる「働く場」を考えていくかが最大の課題であり、回答事例の一つとしてこちらの「The Place」があるのではないのかと思います。

社会的に「一極集中」から「分散」へ

金谷:
ありがとうございます。「オルタナティブ・オフィシング」というのは、日本語でもう少し分かりやすくかみ砕くと、具体的にはどういったことでしょうか。


地主先生:
そうですね。元々の意味は、哲学者イヴァン・イリイチが出した『オルタナティブス』の中で語っており、彼は近代的な社会を批判しました。

つまり近代というのは、様々なものを一極集中化してきた過程があります。とりわけ、不完全なものを1つにまとめてきました。例えば、「刑務所であるならば、社会から逸脱した人たちを集めて再教育する」「体に故障がある、ケガをした人は病院に一極集中させて、それを快復させる」そして、「社会的に未熟な児童は、一か所に集めて教育をする」といったような考え方です。

これが不可視の集中制度に代わったと哲学者ミシェル・フーコが批判することになります。近代を批判する中で、分散していこう、という考え方になります。イリイチは、学校を分散しようと言いました。一極集中するのではなく、社会の中で分散して、社会が教育していく。そして、これをオフィスの考え方に落とし込んだものが「オルタナティブ・オフィシング」であり、社会の中でさまざまに分散していくということがそもそもの考え方です。

「センターオフィス」はハブ化し、働く場は「ワークプレイス」になる

地主先生:
現在、多くの人はオフィスを「センターオフィス」としてイメージングしていると思いますが、もはやそういう呼び方は違うのではないか、という議論も多数出ています。例えば、「コーポレートハブ」という呼び方で表すことがあります。

つまりセンターではなく、ハブだ、という考え方です。実はこの考え方は私が40年近く前に提唱したことでもあり、「未来のオフィスは塾になる」と話したことがあります。

今でもそうですが、当時、塾はセンターである学校よりも授業が遥かに進んでいました。そうすると、児童たちは学校に行く必要がない。しかし、児童たち、生徒たちは学校に行くのが大好きだと言う。ではなぜ好きなのかというと、それぞれの塾で流行っているものとか、ゲームの進行状況とかを、学校に集まって情報交換できるから。要は、学校がハブ化しているということです。

当時、未来のオフィス「センターオフィス」は学校化して、働く場所は塾化する、というようなメタファーで語ったことがあるのですが、まさしく現在はそういった状況だと思います。

かつての「センターオフィス」の機能は失われ、単なるハブになる状況が「オルタナティブ・オフィス」であり、その中で新しいアクティビティが生まれ、それが都市の中に分散化していく。そのような働き方に変わって行くのだと思います。その時の働く場はもはや「オフィス」とは言えず、だから今ではそれを「ワークプレイス」と呼ぶようになったのだと思います。

金谷:
ありがとうございます。歴史的なお話で大変面白いと思います。実際にコロナが来て、在宅ワークやテレワークが本格化する以前から、そういった考え方で提唱されていること、その考え方の例としての学校と塾の経緯は非常に分かりやすく、ピンとくると思います。

会社のように同僚や上司がいるというだけではなく、コミュニティなど“人を集める”ということ自体の意味を改めて考えるきっかけになりましたし、非常に意味があると思います。大変参考になりました。

コミュニケーションが取れることを活かしたオフィス

金谷:
大滝さん、アフターコロナで「分散化するオフィス」と言われていますが、企業からはどのようなリクエストがありますか。


大滝:
一番多いのは、“行きたくなるオフィス”を作ってほしいというリクエストですね。ソロワークは、オフィスという仕事の場のみではなく、家やカフェなどでもできます。しかし、経営者にとってオフィスを持つということの意味は、社員にオフィスに集まってコミュニケーションを取ってほしいということが一番大きいと思います。

みんなが集まる場所としての、コミュニケーションを取れることを活かしたオフィスのあり方というリクエストを受けることが最近は多いです。


金谷:
具体的には、一か所に集まることがオフィスのカタチであり、概念だと思います。それをデザインに落とし込むと、カフェをつくったりみんなが集まれるミーティングの場を設けたりすることがある思いますが、それ以外に何かありますか。


大滝:
コロナ以前は、オフィスの中にカフェなど働く上ではオフィスの中になかったものを持ち込んで、カフェタイムを設けたりコミュニケーションを取ったりするということを推奨してきてはいました。

しかし今のように、本当に出社できない、テレワークせざるを得ない状況や、カフェで働くことがスタンダードになっている状況では、多くの方はわざわざ会社に行かなくても完結してしまっています。

オフィスでしか実現できない、必要な機能を集中させる

大滝:
今、一人ひとりが働く場を選択できる状況においてオフィスが仕事の場として選ばれるためには、社員が自由に働くことができコミュニケーションを取れるよう、デスクやチェアなど家具も含めたオフィス全体のレイアウトに施策を打ち、オフィスでしか実現できない機能を集中させる必要があると思います。


金谷:
例えばオフィス内にスポーツジムやカフェを作ることで福利厚生につなげようというカルチャーが広がっていましたが、そういった機能は、仕事をしながら生活圏内でも利用できます。また、東京の六本木に作ると家賃が高いということもあり、多くの施設を作ることに対して規制がされているのだと思います。


大滝:
そうですね、コンパクトなオフィス作りが必要です。必要なモノは圧倒的にオフィスの外にあります。絶対に必要なものはオフィスの中に象徴として作ればいい。あと一つは、全体的な面積を減らしていく時に、フレキシブルに、いかようにも使えるということが非常に重要になってくると思います。


金谷:
ありがとうございます。先日ある上場企業の社長さんから、「これからのオフィスの存在意義」を考えると、組織としての統一感を再確認していく場所ではないか、というお話をいただきました。まさにそれはカルチャーの形成ですよね。オフィスは、企業が持っているカルチャーを社員に配分し、サービスを通して社員から再配分してもらう場所と感じています。

vol.2、3の記事もぜひご覧ください

vol.2:イノベーションが生まれコミュニケーションが活性化するオフィス作り
https://designers-office.jp/column/workstyle/page/index.php?id=1127

vol.3:「The Place」で実践する、快適で居心地良く働けるオフィス
https://designers-office.jp/column/workstyle/page/index.php?id=1128

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