フリーアドレスが失敗する原因10選|導入時のポイントや成功事例を紹介

フリーアドレスを導入したものの、当初の予定通りに進まずに失敗に終わってしまうケースは少なくありません。本記事では、フリーアドレスオフィスが失敗する原因や成功へと導く対処法、自社オフィスがフリーアドレスに向いているか確認ポイントを解説します。

この記事は約14分で読み終わります。

目次

フリーアドレスとは、社員の固定席を設けず、社内の座席を自由に使用するオフィススタイルです。

オフィススペースを有効活用できたり、社員同士のコミュニケーションを促進したりするメリットがあるため、導入する企業が増加しています。 しかし、企業によってはフリーアドレスが失敗するケースもあります。

本記事では、フリーアドレスの導入が失敗してしまう主な原因と、失敗を防いで成功させるためのポイント、導入で得られるメリットについて解説します。フリーアドレスを導入した成功事例も紹介するので、ぜひ自社のオフィスリニューアルの参考にしてください。

フリーアドレスの導入が失敗する原因10選



フリーアドレスの導入が失敗してしまう理由は、企業やオフィスにより異なります。そこで、代表的な失敗原因を10個紹介します。

・導入目的が曖昧なまま導入する
・フリーアドレスに適した環境が整っていない
・部署内でコミュニケーション不足が発生する
・雑談が増えて生産性が低下する
・新人の指導・サポートが難しい
・書類の管理が上手くいかない
・社内外の人間の区別がつかない
・社員の居場所を把握しづらい
・社員の席が固定化される
・無駄なスペースが生まれる

なぜ失敗につながってしまうのか、確認しましょう。

導入目的が曖昧なまま導入する

フリーアドレスの導入目的が曖昧なまま導入すると、社員になぜ固定席がなくなったのか上手く意図が伝わりません。フリーアドレスなのに社員が毎日同じ座席に座るなど、うまく機能しない可能性があります。

また、目的が定まっていないと、どこにどんなスペースを配置するかも決められません。「動線が確保できていない」「コピー機などの備品が遠い」などオフィス環境が整わず、社員が働きにくくなることもあるでしょう。

フリーアドレスに適した環境が整っていない

フリーアドレスを導入すると、日々座席が変わります。そのため、「業務で使うパソコンをノートPCにする」「私物保管用の個人ロッカーを設置する」など、移動しやすい環境を整えなくてはなりません。

そうした準備をしないままフリーアドレスを導入すると、移動に時間がかかり、生産性が落ちることがあります。

部署内でコミュニケーション不足が発生する

フリーアドレスを導入すると、同じ部署の社員が離れた場所に座ることが増えます。そのため、部署内でのコミュニケーション不足により、連携や生産性が落ちてしまう場合があります。

広いオフィスや複数のフロアにまたがるオフィスでは、誰がどこにいるのか探すのも大変です。移動する手間もかかるため、結果的に報連相や話し合いのスピードが低下し、フリーアドレスの導入失敗だけでなく、業務上のトラブルが発生する可能性も否めません。

雑談が増えて生産性が低下する

好きな座席を選べるフリーアドレスでは、仲の良い社員同士で固まりがちです。その結果、業務中の雑談が増えて生産性が低下することがあります。

フリーアドレスのメリットは部署やチームを超えたコミュニケーションの活性化ですが、仲の良い社員だけで盛り上がっていては、本来目指すべきコミュニケーション促進は達成できません。

新人の指導・サポートが難しい

フリーアドレスでは、必ずしもベテラン社員の近くに新人がいる状況ではないため、新人に目が行き届きにくくなります。新人の様子を上司が簡単に把握できず、適切なタイミングでの指導が難しくなる可能性が出てきます。

また、新人からの質問や相談がスムーズに行いにくいために、学習機会が減り、新人側が不安に感じやすくなることもあるでしょう。最悪の場合、離職につながる可能性も考えられるため、連絡手段の見直しや定期的な1on1ミーティングなど対策が必要です。

書類の管理が上手くいかない

固定席がないフリーアドレスでは、社員が自席に書類を保管できなくなります。移動のたびに持ち歩いたり、保管エリアが遠くなったりと、書類管理が不便になることもあるでしょう。

結果的に、書類を放置し、紛失したり提出が遅れたりといったトラブルが起こる可能性があります。最悪の場合、情報漏洩のような重大なコンプライアンス違反につながるリスクも考えられます。

社内外の人間の区別がつかない

固定席の場合、自分の近辺の座席に誰が座っているのかを容易に把握できます。そのため、知らない人が入り込んできたら、すぐに気づけるものです。

しかし、フリーアドレスを導入すると毎日周囲に異なる人が座るため、目の前の人がどの部署の人なのかが判別しにくくなります。

大規模オフィスであれば、万が一社外の人が混じっていても気づかない可能性があり、セキュリティ面のリスクが高まります。

社員の居場所を把握しづらい

フリーアドレスは、社員の席が毎日変わるため、リアルタイムの居場所を把握することが難しくなります。そのため、電話や来客などで特定の社員を呼び出したいときに手間取ってしまうことが考えられます。

電話の取り次ぎや来客時にスムーズな応対ができないと、時間を浪費することになり、仕事も滞ってしまうでしょう。フリーアドレス導入時のルールとして、居場所を把握するシステムや連絡手段の仕組みを検討する必要があります。

社員の席が固定化される

フリーアドレスにより席が自由化されても、いつも同じ席に座る人が増える場合があります。社員の選択に委ねるだけだと、仲の良い社員同士で集まって席を固定化してしまうケースも見られます。

社員の席が固定化されてしまうと、コミュニケーション不足や連携不足につながるなど、フリーアドレスを導入した意味がありません。

無駄なスペースが生まれる

フリーアドレスを導入すると、全社員分の固定席を用意するよりも座席数を減らせることがあります。

しかし、座席が減ることによって空いたスペースを活用できないと、「オフィススペースの有効活用」というフリーアドレスのメリットが得られなくなります。

フリーアドレスに向いている会社・向いていない会社

企業のスタイルや業種などによっては、フリーアドレスの向き・不向きが存在します。フリーアドレスに不向きな会社で導入してしまうと失敗につながるため要注意です。

フリーアドレスが向いている会社としては、デジタル化によりリモートワークの環境が整っている会社や、多様な働き方を取り入れている会社が挙げられます。

一方、紙の書類が多くペーパーレス化が進んでいない会社は、フリーアドレスには不向きです。また、機密性や公共性が高いデータを扱う会社や経理部署や管理部門などの職種も、固定席のほうが適しています。

【対処法】フリーアドレスの導入を成功に導くポイント



フリーアドレスの導入を成功させるには、まずフリーアドレスにする目的を明確にし、社員に周知することが重要です。

さらに、部署内の連携不足などの失敗を防止するために、オフィス内の環境・設備を整える必要があります。どのようにオフィスを変えると良いのか、ポイントを把握しておきましょう。

・ペーパーレス化を進める
・備品・消耗品は一元管理する
・私物の収納・管理ツールを整備する
・在席率から必要なフリーアドレスの座席数を決める
・社員の居場所を検索できるシステムを導入する
・フリーアドレスを導入した目的に適したレイアウトを設計する
・業務内容に合わせて部分的に導入する
・グループアドレスを導入する
・ABWを取り入れる
・運用ルールを徹底する

オフィスをリニューアルする際のポイントとして、以上の点を意識しましょう。

ペーパーレス化を進める

フリーアドレスでは、書類の管理が課題となりやすいため、ペーパーレス化に取り組みましょう。書類が多いことで、セキュリティリスクや情報伝達の遅れといったリスクも考えられます。

データのクラウド化などによりペーパーレスが進めば、席を移動する際に持ち運ぶ荷物を減らせるため、負担の軽減や業務効率の向上にもつながります。

どうしても紙での管理が必要な書類については、保管場所や運用方法を決め、社員に周知しておくと安心です。

備品・消耗品は一元管理する

フリーアドレスを導入すると自席がなくなるため、ハサミやホチキス、セロハンテープといった業務に必要な事務用品、メモ用紙やホチキスの芯など消耗品の管理方法について新たなルールが必要です。従来のように各社員が自席で私物を管理することが難しくなるため、基本的に備品や消耗品は会社が一元管理するといいでしょう。

また、私物の管理場所が限られるため、オフィスに常備する私物の量を減らす工夫も必要です。作業環境の整理整頓にもつながるので、会社管理の備品・消耗品を増やして社員に私物の削減を呼びかけましょう。

私物の収納・管理ツールを整備する

個人ロッカーや可動式キャビネットなどを導入すると、フリーアドレスでよくある私物の保管場所不足を解消できます。他にも、業務に必要な道具一式をまとめて持ち運べるモバイルバッグやノートパソコンオーガナイザーなども便利です。

私物の管理場所がないと、私物の紛失や盗難といったトラブルにもつながります。オフィスが散らかる原因にもなるので、自社に合ったツールを検討してみましょう。

関連記事:フリーアドレスオフィスで私物を上手に管理する方法&便利な収納グッズを紹介!

在席率から必要なフリーアドレスの座席数を決める

社員の外出の有無など部署の特性から、オフィスに必要な座席数を算出することで、フリーアドレスを導入すべきかを見極めることが可能です。フリーアドレスの適正を判断する指標に、在籍率があります。

在籍率は、以下の方法で算出できます。

【在籍率の算出方法】

  1. 「在席」「(一時的に)離席」「退席」の3項目を設定する
  2. すべての曜日と時間における在席状況を計測する
  3. 「在席」「離席」「退席」それぞれの最小・平均・最大値を出す

以上により、在席率の高い部署・低い部署、離席・退席数が明らかになり、フリーアドレス導入が適してる部署、適正な席数を把握できます。

社員の居場所を検索できるシステムを導入する

フリーアドレスで社員が毎日違う座席に座ると、どこに誰がいるのかわからなくなり、社員同士の連携が取りづらくなります。

スムーズに連携が取れるように、社員の居場所を検索できるシステムを導入するとよいでしょう。ランダムに座席を決めるシステムを利用すれば、座席の固定化防止にも役立ちます。

関連記事:【フリーアドレスの座席管理システム6選】機能・料金の比較&選び方

フリーアドレスを導入した目的に適したレイアウトを設計する

フリーアドレス導入後のレイアウトを決定する際は、導入の目的に合った設計をすることが重要です。たとえば、「社内のコミュニケーションを活性化したいのか」「気分転換や集中できる環境を確保して業務効率化を目指したいのか」「オフィススペースを最適化してコスト削減を図りたいのか」によって、最適なレイアウトは異なります。

オフィス設計には建築基準法や消防法の知識も必要なので、早い段階からプロの業者に依頼したほうが、目的に適したレイアウトを設計できるでしょう。

関連記事:フリーアドレスのレイアウト例5選|失敗しない導入手順を丁寧に解説

業務内容に合わせて部分的に導入する

全社で一気にフリーアドレスを導入するのではなく、業務内容や職種などに合わせて部分的に導入すると大きな混乱や導入後の失敗を防げます。

先述の通り、機密情報を扱う部署や紙の書類が多い部署は固定席が向いていますが、営業など外出する社員の多い部署や、ノートパソコンとスマートフォンが支給されている部署などはフリーアドレスを導入しやすいでしょう。

自社の働き方や部門の状況にあわせて、トライアル的に取り入れる方法も有用です。

グループアドレスを導入する

フリーアドレスによって部署内の連携不足が起こるのを防ぐなら、グループアドレスが役立ちます。

部署ごとに一定の範囲内で座席を選ぶようにすることで、同じ部署の社員がバラけないので連携しやすくなります。

グループアドレスについては下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

関連記事:グループアドレスとは?オフィスに導入する流れとメリットを解説

ABWを取り入れる

通常のフリーアドレスではなく、「ABW(Activity Based Working)」の考え方を取り入れることも検討しましょう。ABWとは、社員が目的に応じて働く環境を選べるワークスタイルのことで、フリーアドレスを発展させた考え方を指します。

個室やオープン席、社外のコワーキングスペースなど、業務に最適な場所で仕事をするため、フリーアドレスのメリットはもちろん、業務効率化も図れるのがメリットです。

ABWについて下記の記事でより詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

関連記事:【オフィス事例4選】「ABW」とは?5つのメリットと導入の流れ

運用ルールを徹底する

フリーアドレスの運用ルールを作成し、社員に周知して徹底させることが重要です。運用ルールが定まっていない、あるいは浸透していない状態では、快適に働けないだけでなく、私物の紛失などのトラブルに発展する可能性もあります。

立場や働き方の異なる社員全員がオフィスを気持ちよく使えるよう、「退席時には私物を片付けてデスクを拭く」「私物は個人用ロッカーにしまう」などルールを明確に決めましょう。

公平で納得感のあるルールを設定し、運用しながらルールを適宜見直し、改善していくことも大切です。

フリーアドレスにはデメリットしかない?導入するメリットとは?

フリーアドレスはレイアウト設計やルール設定の難しさから運用がうまくいかない企業も多く、「フリーアドレスにはデメリットしかない」という意見も耳にするでしょう。

しかし、的確に運用すればメリットが多いワークスタイルであることも事実です。フリーアドレスを導入する代表的なメリットとしては、次の6つが挙げられます。

・業務効率の向上
・社内コミュニケーションの活性化
・チーム編成・人事異動の効率化
・オフィススペースを有効活用
・オフィスの賃料・備品コストの削減
・オフィス・デスクの美化

1つずつみていきましょう。

業務効率の向上

フリーアドレスは、社員がその日の仕事状況や気分に合わせて自由に席を選ぶことが可能です。周囲の音を遮りたいときは集中スペースに移動したり、毎日違う席を選んで他部署との人間関係を構築したり、働きやすい環境を社員自身が選択できます。結果的に、業務効率や生産性の向上が期待できるでしょう。

従来のような固定席では「隣の席の話し声が気になる」「部署間での人間関係がうまくいっていない」などの問題があっても同じ席を使い続けなければなりませんでした。フリーアドレスになれば、業務効率の妨げになっていた問題を上手く避けることができるのです。

社内コミュニケーションの活性化

フリーアドレスでは部署ごとの垣根がなく、毎日違うメンバーとコミュニケーションが取れます。業務上は関わりのない社員と接点ができたり、情報交換する機会ができたりすることで、新しいアイデアやイノベーションの創出が期待できます。

固定席では基本的に部署やチーム単位で席が固まるため、毎日コミュニケーションを取る社員が限定されがちでした。

フリーアドレスであれば、より幅広い交流を促すことができるでしょう。

チーム編成・人事異動の効率化

急なチーム編成や人事異動がある際にも、フリーアドレスなら柔軟な対応が可能です。

固定席の場合には、チーム編成や人事異動のたびにレイアウト変更や配線の張り直しなどの手間が発生し、大きな労力が必要でした。もとから席の移動が自由なフリーアドレスでは、このような手間が必要ありません。

フリーアドレスでは、プロジェクトごとにチームを入れ替える場合でもメンバーが固まって業務を進めやすいため、チーム編成や人事異動が多い会社では大きなメリットとなるでしょう。

オフィススペースを有効活用

社員1人ひとりに固定席を用意する必要がなくなるため、オフィスの限られたスペースを有効活用できるというメリットもあります。

とくに、昨今は出社とリモートワークを選択できる「ハイブリッドワーク」を取り入れる企業が増えており、フリーアドレスが注目される一因となっています。在宅勤務している社員の固定席を削減でき、その分を他の用途に使えるのです。

WEB会議用のスペースを拡充したり、個室ブースを増やしたりなど、オフィスの機能性をさらに高められます。

オフィスの賃料・備品コストの削減

フリーアドレスでは全員分の固定席を用意する必要がなく、座席の稼働率をもとに座席数を最適化できます。

削減したスペースを他の用途に活用するだけでなく、オフィスを縮小して、賃料を削減することが可能です。とくに、ハイブリッドワークを導入している会社や外出する社員が多い会社で有効でしょう。

また、固定席では1人ひとりに備品を配布することになりますが、フリーアドレスでは備品や消耗品を共有できるため、その点でもコストカットにつながります。

オフィス・デスクの美化

固定席がないと、私物の管理場所が少なくなるというデメリットがありますが、オフィスの整理整頓につながり、美化や清潔化が促進されるというメリットも生まれます。デスク上に備品や書類を出しっぱなしにできないため、常に私物を整理して持ち歩いたり、消耗品を会社が一元管理したりする必要があるためです。

また、書類を自席で管理できなくなることから、紙資料のペーパー化が進みます。整理整頓になるだけでなく、書類の紛失や情報漏洩の防止にもつながるでしょう。

【成功事例】フリーアドレスで新しいオフィスのあり方を表現



株式会社JR東日本商事様 では、新しいオフィスのあり方の実現とブランディング向上を目的に、オフィスを改装しています。

単にフリーアドレスにするのではなく、フリーアドレスエリアと固定席を併用し、業務内容に合った座席で仕事ができるようにしているのが特徴です。部署間での社内会議を開催しやすいように、中央にスペースを作るなどの工夫も凝らされています。

事例の詳細はこちら:株式会社JR東日本商事

フリーアドレス導入ガイド」にて、JR東日本商事様のほか、フリーアドレスを導入した企業2社の事例を公開していますので、参考にしてみてください。  

フリーアドレス・ABWのオフィスデザイン・レイアウト事例はこちら

まとめ

オフィススペースの有効活用や社員同士のコミュニケーション促進に役立つフリーアドレスですが、安易な導入は失敗を招きます。

フリーアドレスのメリット・デメリットについては下記の記事でも詳しくご紹介しているので、是非こちらもチェックしてみてください。

関連記事:オフィスのフリーアドレスとは?メリットとデメリット、他社事例も紹介

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